今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、「第69回大阪私学美術展」は、大阪府下の48校の高等学校と18校の中学校が参加して、Webでの開催となりました。
そんな中、1000点近い作品(高校生部門)が寄せられ、向陽台高等学校からも美術部の遊畑百伽さん(2年生)が立体部門に、田中芳明さん(3年生)がデザイン部門にエントリーしていました。
そして、2人とも見事に「奨励賞」を受賞しました。今回は、2人の力作と作品についてのコメントを紹介したいと思います。コロナ禍の不安がまだまだ続く中で、精魂込めてつくられた作品をご覧いただくことで、感動や希望を感じていただけたら、と思います。
第69回大阪私学美術展 奨励賞
「私がいなきゃ、あなたがいなきゃ」
遊畑百伽さん(2年生)
この作品のテーマは“共依存”です。お互いに依存しあって、束縛しあって、抜け出せない状態を表現しています。
作品が緑色なのは、ブロンズ像をイメージしたから。そのブロンズが錆びたり、剥げて中が露わになった様子を金色で表現しました。二人の顔の角度が微妙にズレているのは、心のズレを表わしています。
制作日数は約2か月半。元々は、顧問の谷川先生に人生相談をしているうちに、今の気持ちを作品にしてみようという思いが出てきて実際に制作することにしました。
時には泣きながら、谷川先生に話をきいてもらうこともありました。また、体力的・時間的につらいこともありました。でも、つくっているうちに、だんだん気分が晴れていくのが分かりました。きっと、知らず知らずのうちに自分と真正面から向き合っていたんでしょうね。制作するということは、どこか心の浄化につながっていると感じました。
決して、作品をつくるために恋愛していたわけじゃない。でも、恋愛していたからこそ、この作品をつくることができました。そういう意味では、相談にのっていただいた谷川先生、そして美術部のみんなにも感謝しています。
今回の受賞をひとつのステップにして、卒業されたレジェンドの先輩方の思いを継いでいけるように部活をまとめていきたいと思います。ありがとうございました。
第69回大阪私学美術展 奨励賞
「喫茶『束の間』の喫茶具」
田中芳明さん(3年生)
ぼくは今22歳なんですが、4年くらいコーヒー店でアルバイトしてきました。コーヒーが大好きなんです。そんな中で、いつも感じていたのが、お客さんが決められたスタイルでの喫茶を強いられているんじゃないか、ということでした。お店が選んだカップやソーサーで、店主が淹れたコーヒーを飲んでいる…それは、それでいいことなのかもしれませんが。ぼくは、お客さんが思い思いのもっと自由なスタイルでコーヒーを楽しめるスタイルがあってもいいんじゃないか。そんな思いから制作したのが、この作品です。
コンセプトは、“普段できないことができるコーヒー店”。自分でコーヒーを淹れることはもちろん、木工や陶芸の道具作りからテーブル周りのしつらえまで、自分でつくりあげることができるような喫茶店の提案です。
民芸運動が好きなので、生活に密着した作品づくりを心がけました。ろくろは電動ではなく手動のものを使うことで器に凹凸をつくりました。つくった瞬間はけっこう満足していたのですが、いざ使ってみると、まだまだ使いやすさが足りないと感じています。次は、その点に注意して制作したいと考えています。
これからも、この受賞をステップにして、生活に近い作品づくりと向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。
第69回大阪私学美術展
主催:大阪私学美術・工芸研究会
共催:大阪私立中学校高等学校連合会
大阪私学振興教育研究所
大阪私立中学校高等学校芸術文化連盟
後援:大阪府(申請中)
大阪市
大阪市教育委員会
会期:2020年10月12日(月)~11月15日(日)
会場:大阪私学美術・工芸教育研究所 HP 内「Web美術館」
※「Web美術館」の公開は終了しています。ご了承ください。